村上春樹っぽい散文




「つまるところ村上春樹の小説に出てくる主人公なんてのはな、概ね三十代なんだよ。そう考えると君はまだ若いさ。俺なんて来年50だぜ?」

そんなことを部下らしき男に漏らしながら夕方のラッシュアワーで混み合う千代田線大手町駅をいそいそと2人のビジネスマンが降りていった。きっとどこかのメトロに乗り換えるつもり——大手町駅はいくつもの地下鉄が走るためビジネスマンの巣窟と化している——なのだろう。

僕も俗世間でいう『30過ぎのおっちゃん』でありながら、真の意味では『おっちゃん』ではないのかもしれない。そんなことを考えると彼らの会話が耳にへばり付いて離れなかった。

「やれやれ。疲れて果てて帰ってきたというのにとんだ仕打ちだな」

帰宅後も彼らの会話がリフレインするなか、僕は冷蔵庫の奥深くに眠っていた——もしくは起きていたのかもしれない——食パンとハムで簡単なサンドイッチを作り、それを頬張りながらビールで流し込んだ。そんな軽い食事を終えた頃には心地よい眠気が現れ、僕は抵抗なく寝室へ向かい、眠りにつく。『おっちゃん』という名を置き去りにして。

[※創作の散文だよ!]